帯状疱疹予防のワクチンは2種類あります。

成人用(50歳以上)ワクチンの比較

水痘ワクチンシングリックス
ワクチンの種類生ワクチン不活化ワクチン
接種回数1回(皮下注)2回(2か月後)筋注
予防効果50~60%90%以上
持続期間5年程度9年以上
副反応接種部の痛み、腫れ、発赤
3日から1週間で消失
接種部の痛み、腫れ、発赤、筋肉痛、
全身倦怠感 3日から1週間で消失
料金(7千円+税)/回(2万円+税)/回
長所・1回で済む
・値段が安い
・免疫低下者にも可能
・予防効果が高い ・持続期間が長い
短所・免疫低下者には不可
・持続期間が短い
(5年を超えると50%有効率が低下する)
・痛い
・2回接種が必要(2か月後) ・値段が高い

■ 帯状疱疹はどのように起こるか? 何が問題か? どう予防するか?
水痘と帯状疱疹は同じウイルスによる病気です.水痘が治ってもウイルスは体内に残ります(中年以降の方の90%以上がこの状態).それが何かの拍子に活動を再開すると帯状疱疹を発症します.潜んでいるウイルスを抑え込むのは免疫の力です.それが弱まると帯状疱疹が起こりやすくなるのです(高齢者に多い理由).

したがって,水痘・帯状疱疹ウイルスに対する免疫力を高めれば,帯状疱疹の発症と重症化を予防できるはずです.
帯状疱疹のあとに頑固な神経痛が残ることがあります(帯状疱疹後神経痛).これが一番つらい症状です.


■ 帯状疱疹予防ワクチンの種類
1)水痘ワクチンを流用する: 弱毒化ウイルスの 生ワクチン(国産)1回接種
2)シングリックス:遺伝子組み換え法の 不活化ワクチン(MSD社製)2回接種


■ 2つの共通点
注射で投与し,水痘・帯状疱疹ウイルスに対する特異的な免疫力を高めます.
いずれも,50歳以上の方に使用できます.


■ 違い,その1 --- ワクチンの効果
「水痘ワクチン」はやや弱めです.60歳以上に使うと,帯状疱疹の発症がおおむね半減し,帯状疱疹後神経痛は約1/3にまで減ります.「シングリックス」は非常に強力です.帯状疱疹の発症頻度は,50歳以上の試験で3~5%にまでに激減し,70歳以上でも10%程度まで大幅に下がりました.帯状疱疹後神経痛もそれに見合って減少します.


■ 違い,その2 --- 副反応
いずれも重篤な副反応はまれです.ただ,注射部位が痛んだり腫れたりします.これは「水痘ワクチン」ではごく軽くすみますが,「シングリックス」はかなり強いのです.また,筋肉痛や疲労感,頭痛のような全身症状も「シングリックス」に多いようです.免疫反応を強めるために配合されたアジュバンド成分がその原因と考えられています.
なお,生きたウイルスを含む「水痘ワクチン」は免疫機能低下の人には使えません.


■ 違い,その3 --- 価格と注射回数
当院価格で

「水痘ワクチン」 7,700円 ×1回 = 7,700円
「シングリックス」 22,000円 ×2回 = 44,000円


■ どちらがよいの?
効果の差は明らかです.ただし,費用対効果比(コスパ)も考えましょう.帯状疱疹を発症する可能性は,60歳以上だと1年間で100人に1人程度です(現状では).かかった場合に,本当につらいのは帯状疱疹後神経痛ですが,その頻度はさらに1/10に減ります.
ワクチンの効果がどれくらい長続きするか,まだ十分なデータがないので,追加接種の必要性が判断しづらいところですが,コスパは微妙なところだと思います.